どんなナースコールでも一方的に否定すべきではない
家族も同じ病気を患っていた
私は総合病院の内科病棟で、主に糖尿病と透析の患者さんを担当するナースです。30代で、いまの職場は7年になります。私の祖父も糖尿病から腎臓を患い、足壊疽から両足を切断し、人工透析をしながら療養していましたが、いまから10年以上前に他界しました。そんな経緯があり、私にとっては運命ともいえる仕事内容です。
はっきりものを言う患者さんも多い病棟
患者さんが比較的自分のことは自分で管理されるということもあり、ナースも自立を促す看護を比較的やっていると思います。患者さんの平均年齢も割と高めで、40代以上がほとんどです。生活習慣がもとで病気になっていることも多々あるせいか、食事や排せつなどこだわりが強い患者さんが多く、その点でナースやドクターとの対立があることもしばしばです。
担当外の患者さんからのコール内容にびっくり
ナースコールについては、基本的にはその患者さんの担当のナースが対応します。外回りのナースがいればその人がとることもありますし、看護師長や主任が手の空いている場合にでることもあります。ある夜勤のとき、私が担当していたのではない透析患者さんが、早朝にナースコールをされました。慌てて患者さんのもとに駆けつけると、「先生との赤ちゃんが生まれたの。どう?かわいいでしょ?」という内容でした。その患者さんは糖尿病性の網膜症で、目が見えません。歩くこともできず寝たきりの、いわばおばあちゃんといってもいい年齢の方です。
とにかく患者さんと話を合わせた
そのときは、一体なんのことだろうかと悩んだのですが、私の祖母と同じ世代の患者さんに否定の言葉を言っていいとは思えず、とにかくその場をなんとかしようと「かわいいですね。性別はどちらなのですか?なんてお名前ですか?」と話を合わせ、その患者さんが落ち着いたところで自分の仕事に戻りました。するとその日から、その内容でのコールや会話が、ほかのナースとも繰り広げられてしまうということになりました。
認知症によるものであっても否定せず
その患者さんに認知症の症状が出現していたのでしょうが、皆がこぞっておもしろがり会話を発展させていくので、ドクターは困った様子でしたが、患者さん自身はとても楽しく会話されていました。また、どうしても赤ちゃんの人形のようなものがほしいといったりしていたので、赤ちゃんではありませんが、赤ちゃんに見立てたものを置くととても優しい表情で抱っこされていたのが印象的でした。
ナースコールは患者さんにとっては命綱
ナースコールは、患者さんとナースをつなぐ命綱だと学校では教わりました。決して無視はできない重いコールもあれば、ただ話がしたいというような気軽なものもあります。ただ、どんなときも患者さんとの唯一の架け橋を、ナースは軽視してはいけないように思います。